【オリジナル】ねこのルナ と お星さまの迷路【目安時間20分】

むかしむかし、あるところに、ルナという名前の、真っ白な子猫がいました。

ルナの毛は、まるでふわふわの雲のようで、おひげはぴんと上を向いています。

瞳の色は、澄んだ夜空と同じ、きれいな青色でした。

ルナは、とっても好奇心旺盛な猫。

昼間は、ひらひら舞うちょうちょを追いかけたり、お庭の草の匂いをかいだり、日当たりの良い場所でお昼寝をするのが大好きでした。

でも、ルナが一番好きだったのは、夜の時間でした。

お月さまが優しく世界を照らし、星たちがキラキラとまたたく夜空を、窓辺から眺めるのが、何よりも好きだったのです。

「きれいだなぁ。お星さまは、どうしてあんなにキラキラしているんだろう。いつか、あそこまで行ってみたいな」

ルナはいつも、そんなことを考えていました。

ある静かな夜のことです。

その日もルナは、いつものように窓辺に座って、夜空を眺めていました。

空には、銀色のお皿のようなお月さまと、数えきれないほどの星たちが輝いています。

その中でも、ひときわ大きく、ダイヤモンドのようにキラキラと光る星がありました。

ルナが、その星にうっとりと見とれていると、不思議なことが起こりました。

その大きな星が、すーっと夜空を滑り落ちて、まっすぐルナのお庭に向かってくるではありませんか。

「わぁっ!」

ルナはびっくりして、少しだけ体を丸めました。

星は、しゅるしゅるしゅるーっと、優しい音を立てながら落ちてきて、お庭の真ん中にある、一番大きなかしの木の下で、ぴたっと止まりました。

落ちた場所は、ぽわっと明るく光っています。

ルナは、ドキドキする心臓を押さえながら、そろーり、そろーりと、光の方へ近づいていきました。

足音を立てないように、肉球をそっと地面につけて歩きます。

かしの木の下まで来てみると、そこに星はありませんでした。

そのかわり、星が落ちた場所に、ルナがちょうど通れるくらいの、小さな木の扉ができていたのです。

その扉は、星のかけらを散りばめたように、キラキラと淡い光を放っていました。

そして、どこからか、ほんのり甘い、お花の蜜のような、とっても良い香りがしてきます。

くんくん。

ルナは、鼻をひくひくさせて、匂いをかいでみました。

今までかいだことのない、夢の中のような、甘くて優しい香りです。

「この扉のむこうは、どうなっているのかな」

好奇心で、胸がいっぱいになりました。

少しだけ怖かったけれど、「知りたい」という気持ちの方が、ずっと大きかったのです。

ルナが、その不思議な扉に、ちょん、と前足をかけてみると、扉は、きぃ…と静かな音を立てて、ゆっくりと開きました。

扉の向こうは、信じられないような世界でした。

そこは、壁がふわふわの雲でできた、不思議な迷路の入り口だったのです。

壁の雲は、ほんのりピンク色や水色に色づいていて、触ってみると、綿あめのように柔らかでした。

足元の道には、水晶のように透き通った、光る石が点々と置かれています。

ルナが、その石の上にそっと乗ってみると、「ぽろん」と、ハープのような優しい音が鳴りました。

もう一度、別の石に乗ってみると、今度は「ちりん」と、鈴のようなきれいな音がします。

「わぁ、すごい!」

ルナは楽しくなって、わざと光る石の上だけを選んで、歩き始めました。

ぽろん、ちりん、ぽろん、からん。

まるで音楽を奏でているように、ルナが歩くたびに、道が歌ってくれます。

甘い香りと、きれいな音に包まれて、ルナは迷路の奥へ、奥へと進んでいきました。

しばらく歩いていると、道の両側が、まるでお菓子の森のようになりました。

地面はサクサクのビスケットでできていて、歩くと、こころもち良い音がします。

木は、チョコレートの幹に、葉っぱの形をした緑色のグミがついていました。

そして、足元には、赤や黄色やピンク色の、きれいなキャンディーのお花が咲いています。

「なんて素敵な場所なんだろう!」。

ルナは、あまりの素晴らしさに、目をぱちくりさせました。

あまりにおいしそうなので、チョコレートの木を、ぺろりと舐めてみると、本当に甘いチョコレートの味がしました。

ルナが、夢中でお菓子の森を歩いていると、木の陰から、ひょっこりと誰かが顔を出しました。

大きな尻尾を持った、かわいらしいリスさんです。

「こんにちは、白くて可愛らしいお客さん」

リスさんは、小さな木の実を両手で持ちながら、にこにこと話しかけてきました。

「こんにちは、ぼくはルナ。あなたは?」

「わたしは、この森の案内役よ。迷ってしまったのかしら?」

「うん。ここはどこなの?とっても良い香りがして、きれいな音がするんだ」

リスさんは、にっこり笑って言いました。

「ここはね、『おやすみ前の迷路』よ。頑張った一日を過ごした子が、素敵な夢を見るためにやってくるところなの」

「そうなんだ!」

ルナは、なんだか嬉しくなりました。

「もし良かったら、この迷路のヒントを教えてあげるわ。この先、道が二つに分かれているけれど、一番甘い香りがする方へ進むといいわよ」

そう言うと、リスさんは、ふわふわのマシュマロでできた雲を指さしました。

「さあ、少し休んでいくといいわ。このマシュマロの雲は、食べてもなくならないのよ」

ルナはリスさんにお礼を言って、一緒にマシュマロの雲を少しだけ、ぱくっと食べてみました。

口の中で、しゅわーっと溶けて、優しい甘さが広がります。

体も心も、なんだかぽかぽかしてきました。

リスさんに手を振って、ルナはまた、迷路の冒険を続けることにしました。

リスさんに教えられた通り、一番甘い香りがする方へ、くんくんと鼻を頼りに進んでいくと、今度は、さらさらと水の流れる音が聞こえてきました。

目の前には、キラキラと七色に光る、美しい川が流れています。

その川は、水ではなく、まるで音楽そのものが流れているかのようでした。

近づいてみると、川の流れに合わせて、優しいメロディーが聞こえてきます。

「きれいな川だなぁ。でも、橋がないや。どうやって渡ろう?」

ルナが困って、川の周りを見渡していると、岸辺の大きなキノコの傘の下で、誰かが丸くなって眠っているのを見つけました。

長い耳に、真っ白な毛。

うさぎさんです。

うさぎさんの隣には、小さなハープが置いてありました。

ルナが、どうしようかと考えていると、うさぎさんは、むにゃむにゃと寝言を言いました。

「うーん、あとすこしで、とっても素敵な曲が、できあがりそうなんだけどなぁ…」

どうやら、夢の中で作曲をしているようです。

ルナは、うさぎさんを起こさないように、そーっと近づいて、得意の喉を鳴らしてみることにしました。

ごろごろ、ごろごろごろ…。

ルナの喉の音は、聞いていると、とても安心する、魔法の音です。

その音は、眠っているうさぎさんの耳にも、優しく届きました。

うさぎさんは、心地よさそうに、ふぁ~っと大きなあくびをすると、ゆっくりと目を開けました。

「ああ、よく眠った。なんだか、とっても素敵なメロディーが聞こえてきたような…」

うさぎさんは、目の前にいるルナに気づいて、にっこりしました。

「君が、その素敵な音を聞かせてくれたのかい?」

ルナは、こくんと頷きました。

「ありがとう、おかげで夢の中で作っていた曲が、完成しそうだよ」

うさぎさんは、お礼にと言って、隣に置いてあったハープを手に取りました。

そして、キラキラ光る音の川に向かって、美しいメロディーを奏で始めたのです。

ぽろろん、ぽろろろーん…。

うさぎさんが奏でる音楽に合わせて、川の中から、光る音符たちが、ぷくぷくと浮かび上がってきました。

音符たちは、一列に並んで、あっという間に、川の向こう岸まで続く、きれいな橋になったのです。

「さあ、渡っておくれ。この橋は、優しい気持ちにだけ反応する、魔法の橋だからね」

ルナは、うさぎさんにお礼を言って、音符の橋を渡りました。

一歩進むごとに、足元から優しい音楽が聞こえてきます。

まるで、空の上を歩いているような、不思議な気持ちでした。

音符の橋を渡りきると、目の前には、どこまでも続く、広場が広がっていました。

その広場は、虹色の、ふわっふわな絨毯で、一面が覆われています。

あまりの気持ちよさに、ルナは思わず、ごろーんと寝転がってしまいました。

体が、ゆっくりと絨毯に沈み込んで、まるで雲の上にいるようです。

気持ちが良くて、だんだん眠くなってきました。

ルナが、うとうとしながら転がっていると、もこもことした、たくさんの白い生き物が近づいてくるのが見えました。

羊さんたちです。

羊さんたちは、それぞれ、色とりどりの毛糸玉で遊んでいました。

「あらあら、小さなお客さんだね」

一番体の大きな、お母さん羊が、優しい声で話しかけてきました。

「この絨毯は、気持ちがいいだろう?わたしたちの毛で、編んだんだよ」

ルナは、気持ちが良くて、ごろごろと喉を鳴らしながら答えました。

「うん、とっても気持ちいい。おひさまの匂いがする」

羊さんたちは、それを見て、くすくすと笑いました。

「疲れたのかい?眠くなったら、これを枕にするといい。きっと、良い夢が見られるよ」

そう言って、羊さんたちは、ルナに一番柔らかくて、暖かい、真っ白な毛糸玉をプレゼントしてくれました。

その毛糸玉は、ほんのり暖かくて、抱きしめていると、心が落ち着きます。

「ありがとう。ねぇ、この迷路の出口は、どっちにあるの?」

ルナが尋ねると、羊さんたちは、みんなで空を見上げました。

「あそこをごらん。一番大きく、きれいに輝いている星が見えるだろう?」

見上げると、夜空には、ルナが最初に見た、あのダイヤモンドのような星が、ひときわ大きく輝いています。

「あの星に向かって、まっすぐ進んでごらん。そうすれば、出口はすぐそこだよ」

ルナは、羊さんたちに何度もお礼を言って、もらった毛糸玉を大切に抱えながら、一番星を目指して、再び歩き始めました。

ふわふわの絨毯の広場を抜けると、だんだんと夜空が近くなってくるのが分かりました。

星たちのまたたきが、すぐそばで聞こえてくるようです。

そして、ついにルナは、一番星の真下までやってきました。

そこには、迷路に入ってきた時と、全く同じ、キラキラと光る小さな扉が、静かにたたずんでいます。

扉の向こうからは、月の光が、優しく差し込んでいました。

ルナが、そっと扉を開けると、そこにいたのは、大きくて、にこにこと笑っている、「お月さま」でした。

お月さまは、とても優しい顔で、ルナを見つめています。

「やあ、ルナ。よくここまで来たね。迷路の冒険は、楽しかったかい?」

お月さまの声は、まるで子守唄のように、穏やかで、心に響きます。

「うん!とっても楽しかった!お菓子の森や、音楽の川や、ふわふわの広場に行ったよ」

ルナが、わくわくしながら話すと、お月さまは、ますますにっこりと笑いました。

「そうかい、そうかい。それは良かった。頑張ってゴールまでたどり着いた君に、プレゼントをあげよう」

そう言って、お月さまは、銀色に輝くお皿を、ルナの前に差し出しました。

お皿の上には、小さな星の形をしたクッキーが、一つだけ乗っています。

そのクッキーは、甘くて、バターの良い香りがしました。

「この迷路はね、頑張った一日の終わりに、素敵な夢を見るための、特別な入り口なんだよ。このクッキーを食べれば、きっと、今日の冒険の続きの、楽しい夢が見られるだろう」

ルナは、お月さまに、丁寧におじぎをして、お礼を言いました。

「お月さま、ありがとう」

ルナがそう言うと、あたりが、まぶしいくらいの、優しい光に、さーっと包まれました。

なんだか、とっても眠くなってきて、ルナのまぶたは、自然に、とろんと閉じていきました。

次に、ルナが、ふと目を覚ましたとき…。

そこは、不思議な迷路ではありませんでした。

いつもの自分の部屋の、お気に入りの、柔らかいベッドの上でした。

窓からは、朝の優しい光が差し込んでいます。

「あれ…?夢だったのかな…?」

ルナは、まだ少しぼんやりとしながら、体を起こしました。

すると、自分の前足が、何かをぎゅっと握りしめていることに気づきました。

そっと開いてみると…。

そこには、羊さんたちにもらった、ふわふわの真っ白な毛糸玉と、お月さまにもらった、星の形をしたクッキーが、ちょこんと乗っていたのです。

クッキーは、欠けることなく、きれいな星の形をしていました。

夢ではなかったのです。

ルナは、嬉しくなって、星のクッキーの先を、ほんの少しだけ、かりっとかじってみました。

口の中に、優しい甘さと、バターの香りが、ふわーっと広がります。

それは、今まで食べたどんなおやつよりも、おいしい味がしました。

ルナは、残りのクッキーを大切にしまい、羊さんにもらった毛糸玉を、ぎゅーっと抱きしめました。

まだ、ほんのりと暖かさが残っています。

ルナは、毛糸玉を枕にして、もう一度、ベッドにごろんと横になりました。

不思議な迷路の冒険を思い出しているうちに、また、心地よい眠気がやってきました。

「また、あの迷路に行きたいな…」

ルナは、甘いクッキーの余韻を感じながら、幸せな気持ちで、再び、すーっ、すーっと、静かな寝息を立て始めました。

これから毎晩、眠りにつくのが、もっともっと、楽しみになったルナなのでした。

投稿者 まねき猫

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