さあ、夜になりました。
窓の外にキラキラ光るお星さまがたくさん輝いています。
あの星たちの中に、とても大切なお約束をした、仲良しの二人のお話があります。
むかしむかし、ずーっと高いお空の上、天の川という大きな川のそばに、織姫さまという、それはそれはきれいな女の子が住んでいました。
織姫さまは、お空の神様、天帝さまの大事な娘。彼女のお仕事は、五色の糸を使って、ピカピカ光るお洋服を織ることでした。
ガッチャン、ガッチャン……。
織姫さまが機織り機で織る布は、虹色に輝いて、ふわふわと軽やか。
神様たちはみんな、「織姫さまのお洋服は、本当に素敵だね!」と喜んでいました。
織姫さまも、お仕事は大好きでしたが、毎日一人で機を織っていると、なんだかさみしい気持ちになっていました。
ある日、天帝さまは思いました。
「私の娘は、いつも一生懸命働いている。そうだ、誰か、娘を笑顔にしてくれる優しいお友達を探してあげよう!」
天帝さまが下を見てごらんになると、広い広い野原で、牛たちのお世話をとても真面目にしている、一人の男の子を見つけました。
名前は彦星、牛飼いの青年です。
彦星さんは、雨の日も風の日も、朝早くから夜遅くまで、牛さんにご飯をあげたり、体を洗ってあげたり、それはもう働き者でした。
天帝さまは、彦星さんを天の国に呼んで、織姫さまとお見合いをさせました。
織姫さまは、彦星さんの優しそうな目と、力強い手を見て、すぐに好きになりました。
彦星さんも、織姫さまのキラキラした笑顔を見て、「こんなに可愛い人に出会えるなんて!」と、すぐに夢中になりました。
二人は、すぐに結婚し、お空で一緒に暮らし始めました。
結婚した織姫さまと彦星さんは、毎日が楽しくて楽しくて、仕方がありませんでした。
「ねえ、彦星さん、今日はどこで遊ぶ?」
「織姫さま、僕が新しい歌を歌ってあげるよ!」
二人は、朝から晩まで、手をつないで、お空の雲の上を走り回ったり、星のかけらを追いかけっこしたりして、遊んでばかりいました。
楽しすぎて、二人は大事なお仕事のことを、すっかり忘れてしまったのです。
織姫さまの機織り機は、ガッチャンという音を立てなくなり、五色の糸はホコリをかぶりました。
神様たちは、古くなったお洋服を着るしかなくなり、「あれ?新しいお洋服はまだかな?」と困り顔です。
一方の彦星さんも、地上にいる牛さんたちのところへ行くのをやめてしまいました。
ご飯をもらえなくなった牛さんたちは、お腹を空かせて「モー、モー」と悲しい声で鳴き、やせ細ってしまいました。
そして、お腹が減りすぎて、畑の柵を壊して、村の人たちの大事な野菜まで食べてしまったのです。
地上も、お空も、大騒ぎです。
天帝さまは、娘と婿の様子を見て、とてもがっかりしました。
「あんなに真面目だった二人なのに、どうしてこんなに怠け者になってしまったのだろう」
天帝さまは、愛し合うのは素晴らしいことだけれど、それで周りのみんなを困らせるのはいけない、と教えなければならないと思いました。
天帝さまは、遊び呆けている二人のところへ、怒った顔で行きました。
「お前たち!自分の責任を忘れて、遊んでばかりいるとは、どういうことだ!」
織姫さまは、父の厳しい声にハッとしました。
彦星さんも、荒れた牧場の牛さんたちを思い出し、後悔の涙がポロポロと流れました。
「お父様、ごめんなさい!もう二度と、お仕事を忘れません!」
天帝さまは、二人が反省していることは分かりましたが、このままではいけないと決めました。
天帝さまは、二人が決して簡単には会えないように、もともと流れていた天の川の流れを、もっともっと速く、もっともっと広くして、二人を遠くに引き離してしまいました。
織姫さまは川の西側、彦星さんは川の東側。
二人は、目の前でザーザーと流れる川を見て、泣き崩れました。
もう、大好きな人に、触れることもできないのです。
織姫さまは、「彦星さまと会いたい!もう一度、遊んで笑いたい!」と、声をあげて泣きました。
彦星さんも「織姫さま!」と、名前を呼ぶことしかできませんでした。
天帝さまは、二人の悲しい涙を見て、心が痛みました。
「良いか、二人とも。お前たちがもし、また前のように、一生懸命、自分のお仕事をするならば……」
天帝さまは、静かに言いました。
「一年に一度だけ。七月七日の夜に限り、この天の川を渡って会うことを許そう」
その言葉は、二人の心に小さな光を灯しました。
織姫さまはすぐに「はい!必ずお約束を守ります!」と誓いました。
彦星さんも「心を込めて牛たちのお世話をします!」と誓いました。
こうして、二人はお互いに「また来年、会おうね!」と指切りをして、それぞれの場所で、お仕事を頑張り始めたのです。
織姫さまは、もっともっと一生懸命、機織り機に向かいました。
ガッチャン、ガッチャン。彼女の織る布は、夜空でベガという一番星になって、キラキラと輝き始めました。
彦星さんも、朝早くから牛さんたちのお世話をしました。
ご飯をあげ、病気の牛さんを優しく撫でました。彼の頑張りは、夜空でアルタイルという、もう一つの明るい星になって、力強く輝き始めました。
そして、とうとう一年が経ちました。
待ちに待った七月七日の夜。
天帝さまは、一年間頑張った二人の姿を見て、「えらいぞ!」と褒めてあげました。
すると、どこからともなくカササギという鳥たちが、たくさんたくさん飛んできて、その羽を並べて、天の川にふわふわの橋を架けてくれました。
織姫さまと彦星さんは、その橋を走って渡り、一年ぶりに再会しました。
二人は抱き合い、喜びのあまり泣いて、そして笑いました。
この、年に一度の特別な夜を、私たちは七夕と呼びます。
しかし、もし七月七日の夜に雨が降ると、天の川の水かさが増して、カササギさんたちが橋を架けられなくなります。その雨は、会えなかった織姫さまの悲しい涙だと言われています。
だから、織姫さまと彦星さんは、「また来年、必ず会えますように」と願いながら、一年間、一生懸命お仕事をするのです。
