【オリジナル】星の粉ふしぎな帽子【目安時間10分】

ほしのこ な ふしぎな ぼうし

昔々、それはそれは遠くにある、虹色の空が広がる国のお話です。

その国では、誰もが小さな魔法を使うことができました。

例えば、寒い日には、手のひらで暖かな雨を降らせたり。

お腹が空いたら、ふわふわの雲を甘い綿菓子に変えたり。

皆が幸せに暮らしていました。

この国に、コロンという、ちっちゃな坊やがいました。

コロンは、魔法を使うのが大好きな、ちょっぴりいたずらっ子です。

いつも元気いっぱいで、あちこちを駆け回っていました。

コロンが住む家は、きのこの形をしていて、窓からは、朝になるときらきらと光る星の粉が降り注いできました。

この星の粉こそ、この国の魔法の力の元です。

ある朝のことです。

コロンは、いつものように、窓から入ってきた星の粉を、両の手のひらでそっと集めました。

「さて、今日は、何をおまじないしようかな?」

コロンは、ニヤリと笑って、小さな星の粉を、大切に大切に集めている、お母さんの大事な魔法の袋の中に、そっと混ぜ込みました。

お母さんの魔法の袋は、普段は絶対に触っちゃいけない、とコロンは知っていました。

でも、コロンはどうしても、お母さんの魔法がどんな風に変わるのか、見たかったのです。

お母さんが、袋の星の粉を使って、朝ごはんのおまじないを始めました。

お母さんは、小さな声で、「ぽわぽわ、ふわふわ、甘いパンになあれ!」と唱えました。

ところが、お皿の上にあらわれたのは、甘くてふわふわのパンではなくて、ぴょんぴょん跳ねる、緑色のボールでした!

「えーっ!」

お母さんはびっくりして、目を丸くしました。

コロンは、お母さんには叱られないように、こっそり隠れていましたが、お腹の中でくすくす笑ってしまいました。

「なんだか、面白いぞ!」

その日から、コロンは、毎日毎日、小さないたずらを始めたのです。

お父さんが、お仕事のための空を駆ける箒を磨いていると、コロンは箒にこっそり眠気の魔法をかけました。

すると、お父さんが箒に乗って、「ビューン!」と飛び立った途端、箒は途中で「スースー……」と眠ってしまい、お父さんはふわふわの雲の上に、そっと落ちてしまいました。

お隣のお婆さんが、綺麗な花を咲かせる魔法をかけると、コロンはこっそり笑いが止まらなくなる魔法をかけました。

すると、せっかく咲いたお花は、「キャハハハ! ウフフフ!」と、笑い続けて、振り子みたいに揺れ始めました。

皆は、変な魔法にびっくりしながらも、ちょっとだけくすっと笑ってしまいました。

でも、コロンのいたずらは、だんだんと大きくなっていきました。

ある晩のことです。

コロンは、「世界中を、丸ごとびっくりさせちゃおう!」と思い付きました。

コロンは、窓の外で、一番大きくて、きらきら光る星の粉を、そっと掴まえました。

そして、その星の粉に、コロンが持っている全部のいたずらの魔法をかけました。

コロンは、その魔法の星の粉を、魔法の国の真ん中にある、魔法の泉の中に、ポチャンと、静かに浮かべました。

魔法の泉は、この国の全ての魔法の元になっている、大切な泉です。

コロンは、静かに帰って、明くる朝、皆が驚く顔をわくわくしながら待っていました。

次の日の朝、コロンは、頭のてっぺんからつま先まで、ぶるぶると震えました。

空が、虹色ではなく、何も色のない、真っ白な空になっていたのです。

そして、コロンのお母さんが、朝ごはんのおまじないをしようと、小さな声で唱えました。

「ぽわぽわ、ふわふわ、甘いパンになあれ!」

でも、お皿の上はからっぽのままでした。

魔法は、消えてしまったのです。

コロンのお父さんは、仕事へ行くために、空を駆ける箒に乗ろうとしました。

でも、箒はただの木の枝になっていて、飛ぶことができません。

皆も、びっくりして、慌てて魔法を使おうとしました。

「小さなお花、咲け!」と唱えても、お花は咲きません。

「暖かな雨、降れ!」と唱えても、雨は降りません。

皆の目は、悲しみと困った顔でいっぱいになりました。

魔法の国から、虹色の色と、笑い声が、一つずつ、消えていったのです。

コロンは、胸がきゅっとなりました。

「た、楽しいいたずらになるはずだったのに…」

コロンは、もういたずらなんて、したくありませんでした。

コロンは、自分が、とんでもないことをしてしまったのだと、気付いたのです。

コロンは、しょんぼりと、魔法の国の真ん中にある、魔法の泉に行きました。

泉の水は、涙みたいに透明で、きらきらと光っていません。

泉の傍に、この国で一番賢いおじいさんが、しょんぼりと座っていました。

コロンは、恐る恐る、おじいさんに言いました。

「ごめんなさい。僕が、泉にいたずらの魔法をかけた、大きな星の粉を、浮かべちゃったんだ…」

おじいさんは、コロンを優しく見つめました。

「ああ、コロン。そうだったのかい。」

おじいさんは、静かに言いました。

「君が遊びたかった気持ちはわかるよ。でも、魔法というのは、誰かを幸せにするために使わなくちゃいけないんだ。いたずらで使うと、魔法は悲しんで、力をなくしてしまうんだよ。」

コロンは、ポロポロと、涙を零しました。

「どうしたら、魔法は戻るの? 虹色の空に、戻せる?」

おじいさんは、コロンに、不思議な帽子を渡しました。

それは、まるで夜空みたいに、深くて青い帽子でした。

「この帽子は、夢を見る魔法が詰まっているんだ。君が、本当に大切な夢をこの帽子に見せれば、魔法は悲しみから覚めて、元の力を取り戻すだろう。」

おじいさんは続けました。

「でも、夢を見せるには、一番遠くにある、『星の元』まで行って、星の粉を、最初に貰ったときみたいに綺麗な気持ちで、集めてこなくちゃいけない。」

コロンは、ぎゅっと、不思議な帽子を抱きしめました。

「うん! 僕、行くよ! 皆の笑い声を、取り戻すんだ!」

コロンは、大きな勇気を出して、魔法の国を、とぼとぼと歩き始めました。

コロンは、歩いて歩いて、魔法の国の、一番遠くにある、夢の山に辿り着きました。

山のてっぺんには、きらきらと光る、魔法の星の粉が、いっぱい降っていました。

コロンは、小さな手のひらで、そっと、星の粉を集めました。

「お母さんの甘いパン…お父さんの飛べる箒…お婆さんの笑うお花…」

コロンは、今までいたずらで魔法を使ったことを全部思い出しました。

そしてコロンは、「皆が笑ってくれる、嬉しい魔法を使うこと」が、一番の夢なんだと、気付いたのです。

コロンは、集めた星の粉を不思議な帽子にそっと振りかけました。

帽子は、青色から虹色に鮮やかに光り始めました。

コロンは、急いで急いで、魔法の国に帰ってきました。

不思議な帽子は、キラキラ輝いています。

コロンは、その帽子を、魔法の泉に、そっとそっと、静かに浮かべました。

すると、泉の水が、あっという間に、暖かいオレンジ色に光り始めました。

そして、そのオレンジ色の光は、水色、赤色、黄色と、どんどん色を変えて、最後には、虹色に輝きました。

魔法が、戻ってきたのです!

皆は、「わあ!」と、大きな声を上げました。

さっきまで真っ白だった空に、虹色の光が、フワッと広がり、温かい雨が、シトシトと降ってきました。

お花は、「キャハハハ!」と笑いながら、もっともっと綺麗に咲き始めました。

コロンは、おじいさんにぎゅっと抱きついて言いました。

「良かった! 魔法、戻ったよ!」

おじいさんは、にこにこと笑って、コロンの頭をなでなでしました。

それからというもの、コロンはいたずらっ子ではなくなりました。

コロンは、小さな星の粉を集めて、皆を笑顔にする魔法ばかり、使うようになりました。

例えば、寒そうにしている小さな鳥に、ふわふわの暖かい毛糸の魔法をかけたり。

泣きそうになっているお友達に、面白い顔の魔法をかけたり。

魔法の国には、再び虹色の空と、皆の楽しい笑い声が、響き渡るようになりました。

コロンが戻した魔法は、前よりもずっと、優しくて、暖かい魔法になったのです。

コロンは、魔法を使うのは、誰かを幸せにすることなんだと、いつまでも忘れませんでした。

投稿者 まねき猫

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