むかしむかし、まあるいおやまの、ちいさな、ちいさな、ふくろうの森に、コロンという名前の、それはそれはちっちゃなフクロウの赤ちゃんが住んでいました。
コロンは、まだ生まれて数ヶ月。ふわふわの羽は、ミルクティーみたいにやさしい色をしています。
コロンのお家は、いちばんおおきなカシの木のてっぺん。お母さんとお父さんに、いつもぎゅーっと抱っこされて、**「ホーホー」**と静かな子守歌を聞きながら眠るのが大好きでした。
ある日の夕方。お日さまが、おやまの向こうにゆーっくりと沈んでいく頃です。森じゅうが、オレンジ色とむらさき色のきれいなまほうに包まれていました。
「コロン、もうすぐねんねの時間だよ」
お母さんが、やさしい声でささやきました。でも、コロンはいつものように、ねむねむになりません。目をぱっちり開けて、きょろきょろとあたりを見回しています。
「おかあさん、あのね、まどから見える、あのあかいものはなぁに?」
コロンが指差したのは、お家の窓のすぐ外。いつもはみどり色だった大きな木の葉っぱが、なんだかキラキラと輝いて、とってもきれいな色に変わっているのです。
「ああ、あれはね、紅葉というんだよ」
お母さんはコロンを抱きしめながら、教えてくれました。
「紅葉??」
「そう。季節があきになって、だんだん寒くなってくると、木々がおひさまの光をぜんぶ集めて、葉っぱの色を変えるんだ。まるで、森じゅうがおひさまの色のローブを着たみたいにね」
コロンは、そのおひさま色のローブから、目を離すことができません。
まっかな葉っぱ。きいろな葉っぱ。オレンジ色、うすもも色、そしてちょっとだけみどり色も残っている葉っぱ。どれもこれも、うっとりするくらいきれいです。
「コロン、あしたは、みんなで紅葉狩りに行こうか。紅葉狩りというのはね、森のなかに降りていって、きれいな紅葉を探しに行くことだよ」
その言葉を聞くと、コロンの眠気は、どこかへ飛んでいってしまいました。
「やったぁ! いく! いく!」
「しーっ、しーっ。声を小さくね。お隣のハリネズミさんが起きちゃうよ」
お母さんにふわふわの羽でなでられて、コロンはしずかに目を閉じました。明日の紅葉狩りのことを考えると、胸のなかがぽかぽかして、いつのまにか、すうすうと、いい気持ちで眠りにつきました。
次の日の朝。おひさまが森の木々の隙間からこぼれてくると、コロンは、はっと目を覚ましました。
「おかあさん! おとうさん! 紅葉狩りだよ!」
コロンは、まだちょっぴり眠そうな両親をつついて、急かしました。
「はいはい、わかったよ。さあ、ごはんを食べて、お着替えをしようね」
コロンは、おいしい木の実のスープを飲んで、お気に入りのどんぐり色のマフラーを巻きました。お母さんとお父さんに挟まれて、そーっと、そーっと、お家を出発です。
お家を出て、カシの木の幹をとことこと下りていくと、森の地面には、きのう窓から見たおひさま色の葉っぱたちが、ふっかふかに積もっていました。
「わあ!」
コロンは思わず声をあげました。地面はもう、いつものくろっぽい土の色じゃありません。まるで、オレンジ色と赤色の、きらめくじゅうたんが敷かれているみたいです。
コロンが、おそるおそると、その落ち葉のじゅうたんに、ちいさなあんよを降ろしました。
「サクッ」
「カサカサッ」
足の裏から聞こえてくるのは、なんとも気持ちいい、やさしい音です。コロンは、それがおもしろくて、サクサク、カサカサと、何度も踏みつけてみました。
「コロン、こっちだよ。もっときれいなところがあるからね」
お父さんが、コロンをやさしく招きました。
コロンは、両親について、落ち葉のじゅうたんの上をとてとてと歩きました。
しばらく歩くと、大きなカエデの木の下に着きました。カエデの葉っぱは、太陽の光を浴びて、びっくりするくらい、まっかっかです。まるで、森の太陽みたいに、あかるく輝いているように見えます。
その木の足元には、まるい、まるい、小さな赤い葉っぱがたくさん落ちています。コロンは、かがんで、それを一枚、そっと拾い上げました。
「わあ、みてみて! おかあさん! ハートの形だよ!」
そう、その葉っぱは、まるでちっちゃなハートみたいに、かわいらしい形をしていたのです。
「ほんとうだ。それは、カエデの木の、まほうのハートだね」
お母さんが、にっこり笑いました。
コロンは、**「まほうのハート」**を大切に胸に抱きしめました。
さらに奥へ進むと、今度はイチョウの木の林がありました。イチョウの葉っぱは、カエデとは違って、まっ黄色。まるで、空から金貨が降ってきたみたいに、まぶしく光っています。
地面に積もったイチョウの葉っぱは、やわらかい光を放っていて、コロンは思わず目を細めました。
コロンは、ふわっと、両手いっぱいにイチョウの葉っぱをすくい上げました。
そして、**「えいっ!」**と空に向かって投げ上げます。
きいろい雨が、コロンの上にひらひら、ひらひらと降ってきました。コロンはキャッキャッと笑いながら、そのきいろい雨を浴びました。
お父さんもお母さんも、目を細めて、そんなコロンの様子をあたたかく見つめています。
たくさん歩いて、たくさん遊んで、コロンの小さな羽には、まっかなカエデのハートと、きいろいイチョウの金貨がくっついて、キラキラ輝いています。
「コロン、そろそろお家に帰ろうか。おひさまが、おねむの時間だよ」
お母さんが、そっと声をかけました。
森の奥のほうでは、もう夕焼けのいろが、木々をやさしく染め始めています。
帰りの道も、サクサク、カサカサ。行きとは違って、なんだかしんみりと静かな音がします。コロンは、お父さんの背中にしっかりと抱っこされて、ゆらりゆらりと運ばれています。
お家に帰って、あったかいミルクを飲んで、コロンはベッドに寝転びました。
窓の外では、お月さまが、まんまるに輝いています。
まっかなハートの葉っぱと、きいろい金貨の葉っぱは、コロンの枕元にそっと置かれました。
「おかあさん、あのね。紅葉狩りはね、とってもたのしかったよ。森じゅうが、コロンのために、おひさま色のおふとんを敷いてくれたみたいだった」
コロンは、うとうとしながら、言いました。
「そうだね。あのおひさま色のまほうは、コロンをやさしい夢の国へ連れて行ってくれるんだよ」
お母さんは、コロンのふわふわの頭を、そっとなでました。
コロンのまぶたの裏には、まっかなハートと、きいろい金貨の、あたたかい色が広がっています。
サクッ、カサカサッという、落ち葉のやさしい音が、コロンの心に子守歌みたいに響きました。
そして、コロンは、おひさま色のまほうに包まれて、しずかに、しずかに、深い眠りについたのでした。
