【オリジナル】キラキラタウンへようこそ【目安時間15分】

​コウキくんは、世界で一番の建築家です。

​といっても、コウキくんはまだ小学校にあがったばかりの男の子。

彼が作るものは、本物のビルや道路ではありません。

コウキくんの部屋いっぱいに広がる、カラフルなブロックやピカピカのミニカー、そしてたくさんのおもちゃの仲間たちが、彼の建築材料であり、彼の街の住人なのです。

​その日の午後も、コウキくんは床に広げた大きな緑色のマットの上で、新しい街づくりに夢中になっていました。

緑色のマットは、これから生まれる街の豊かな大地です。

​「よし、まずは道路からだ!」

​コウキくんは、灰色の平たいブロックを次々とつなぎ合わせていきます。

まっすぐな道、ゆるやかなカーブの道、そして街の中心には、車がぐるりと回れるロータリーも作りました。

道路ができあがると、コウリくんは満足そうに頷き、今度は建物を建て始めました。

​赤いブロックと青いブロックを交互に積み重ねて、コウキくんとパパとママが住む、大きくて素敵なおうちを作ります。

黄色い屋根を乗せたら、まるでお日様がにっこり笑っているみたいに見えました。

​「次は、みんな大好きなお菓子屋さん!」

​甘い匂いがしてきそうな、ピンクと白のしましま模様のブロックで壁を作り、透明なブロックを窓にはめ込みます。

お店の中には、小さなケーキやキャンディーのミニチュアを並べました。

ドアの前に来たお客さんが、中を覗いて

「わあ、おいしそう!」と声をあげるのが聞こえるようです。

​それから、空に届きそうなほど高い、キラキラ光る銀色のブロックでできたオフィスビル。

たくさんの人形たちが働く場所です。

窓からは、街の景色が一望できるに違いありません。

​公園も忘れちゃいけません。

緑のブロックで芝生を作り、カラフルな滑り台と、ゆらゆら揺れるブランコを置きました。

公園の真ん中には、大きな木のブロックを立てて、小鳥の人形をそっと枝に乗せてあげます。

​最後に、街の玄関口となる駅を作りました。

長いホームに、カラフルな電車が停まっています。

「ガタンゴトン、ガタンゴトン」と、今にも動き出しそうです。

​ミニカーを道路に並べ、クマさんの一家をおうちに、ウサギさんたちをお菓子屋さんに、ライオンの駅長さんを駅に配置すると、コウキくんの街はすっかり命を吹き込まれたようでした。

​「よし、完成だ!この街の名前は…『キラキラタウン』だ!」

​コウキくんは両手を腰にあてて、胸を張って言いました。

床に広がるキラキラタウンは、コウキくんの想像力が作り出した、世界でたった一つの、最高に素敵な街でした。

​キラキラタウンでの毎日は、とても楽しく、にぎやかでした。

​朝になると、クマのパパはミニカーに乗って、銀色のオフィスビルへお仕事に出かけます。

ウサギの子供たちは、公園の滑り台を何度も滑って、キャッキャと笑っています。

お菓子屋さんには、甘いものを買い求めるお客さんがひっきりなしにやってきます。

駅からは、たくさんの人形たちを乗せた電車が、隣町へ向けて出発していきました。

​コウキくんは、そんなキラキラタウンの神様です。

ミニカーを「ブーン、ブーン」と走らせ、人形たちを動かして「こんにちは!」「いいお天気ですね」とおしゃべりさせます。

お腹が空いたら、お菓子屋さんでケーキを買う真似をして、おうちに持って帰ります。

​ところが、そんな平和なキラキラタウンに、初めての問題が起きました。

​ある日のこと、コウキくんは救急車のミニカーを手に取りました。

「ピーポー、ピーポー!大変だ!クマのおばあちゃんが、お腹が痛くなっちゃった!急いで病院へ連れて行かなくちゃ!」

​コウキくんは、クマさんのおうちの前に救急車を停め、クマのおばあちゃんの人形をそっと乗せました。

そして、サイレンを口で鳴らしながら、病院へと向かわせます。病院は、街の反対側にある白いブロックの建物です。

​「ピーポー、ピーポー!どいてください、救急車が通ります!」

​勢いよく走り出した救急車でしたが、お菓子屋さんの前で、ピタッと止まってしまいました。

「あれ?」

​どうしたのでしょう。

お菓子屋さんは大人気なので、お店の前の道には、お客さんたちのミニカーがたくさん停まっていたのです。

道が狭くて、救急車が通り抜けられません。

​「うーん…こっちの道から行こう」

​コウキくんは、救急車をバックさせて、別の道を選びました。

今度は、くねくねと曲がりくねった、見た目がとってもお洒落な道です。

コウキくんのお気に入りの道でした。

​「ピーポー、ピーポー!」

​しかし、救急車は少し車体が長いので、急なカーブをうまく曲がりきれません。

ゴツン!と、道の角のブロックにぶつかってしまいました。

​「あいたたた…これじゃあ、先に進めないよ…」

​救急車の中から、運転手さんの困った声が聞こえてくるようです。

クマのおばあちゃんは、まだお腹が痛いままです。コウキくんは少し焦ってきました。

​「どうしよう…。せっかく作ったかっこいい街なのに、救急車が通れないなんて…」

​コウキくんは、なんだか悲しい気持ちになりました。

自分の作った街は、見た目は素敵だけれど、本当に困っている人を助けられないのかもしれない。

​その時、また別の問題が起こりました。

「ウー!ウー!カンカンカン!」

​今度は、消防車のミニカーの出番です。

銀色のオフィスビルの近くで、小さな火事が起きたという設定です。

「火事だ!早く消しに行かないと!」

​消防車は消防署から元気よく飛び出しましたが、やはり、広い道が少ないため、あちこちで他のミニカーに道を阻まれてしまいます。

これでは、火事がどんどん大きくなってしまうかもしれません。

​さらに、駅ではこんな困ったことが起きていました。

大きな観光バスが、お客さんをたくさん乗せて駅前のロータリーに入ろうとしました。

でも、ロータリーが小さすぎて、バスのおしりがブロックの建物にぶつかってしまいます。

「うーん、これじゃあ、みんなを降ろしてあげられないなあ」

バスの運転手さんは、すっかり困り顔です。

​公園からも、悲しそうな声が聞こえてきました。

「うわーん、ブランコが高すぎて、一人で乗れないよぉ」

一番小さなリスの赤ちゃんが、高すぎるブランコを見上げて泣いています。

​コウキくんは、すっかりしょんぼりしてしまいました。キラキラタウンは、楽しいけれど、なんだか「暮らしにくい街」だったのです。

​コウキくんは、床に広がるキラキラタウンをじっと見つめました。

お気に入りの建物、かっこいい道路、可愛い公園。

それを壊してしまうのは、とても嫌でした。

​でも、お腹が痛いクマのおばあちゃんのこと、火事を消しに行けない消防車のこと、駅で立ち往生しているバスのこと、そして、ブランコに乗れなくて泣いているリスの赤ちゃんのこと…みんなの困った顔が、次々と頭に浮かんできます。

​「このままじゃダメだ…」

​コウキくんは、ぎゅっと唇を結びました。

​「見た目が素敵なだけじゃ、本当に良い街じゃないんだ。

みんなが安心して、楽しく暮らせる街じゃなくちゃ意味がない。

よし、僕がこの街を、もっともっと素敵な街に作り直すんだ!」

​それは、コウキくんにとって、とても大きな決心でした。

ただ壊すのではありません。

「改良」するのです。

もっと良くするために、勇気を出して作り変えるのです。

​まず、コウキくんが取り掛かったのは、一番の問題だった道路です。

​「救急車さん、消防車さん、待っててね。今、広い道を作ってあげるから!」

​コウキくんは、お菓子屋さんの前の道路のブロックを、一度全部取り外しました。

そして、今までよりも一列分、広い道路になるようにブロックを並べ直します。

​「これだけじゃだめだ。みんなが車を停める場所がないから、道に停めちゃうんだ」

​そう考えたコウキくんは、お菓子屋さんの隣にあった小さな花壇のブロックを取り除き、そこに平らな灰色のブロックを敷き詰めました。

「ここが駐車場だよ。みんな、これからはここに車を停めてね」

​コウキくんはミニカーを一台一台、丁寧に駐車場に並べてあげました。すると、お菓子屋さんの前の道は、すっきりと広くなりました。

​次に、急なカーブの道です。

「ここは、ゆっくり曲がれるようにしないとね」

コウキくんは、カクンと曲がっていた部分のブロックを外し、カーブがゆるやかになるように、斜めの形のブロックをいくつか使って滑らかにつなぎました。

​「よし、これで試してみよう!」

​コウキくんは、もう一度、救急車をクマさんのおうちから走らせてみました。

「ピーポー、ピーポー!」

救急車は、新しくなった広い道をスイスイと進みます。

お客さんの車が停まっていないので、もうぶつかることはありません。

そして、ゆるやかになったカーブも、スムーズに曲がることができました。あっという間に、病院に到着です。

​「やったあ!おばあちゃん、もう大丈夫だよ!」

​コウキくんは、まるで自分のことのように嬉しくなりました。消防車も、この道なら楽々と走れます。

​次は、駅前のロータリーです。

「バスがゆったり回れるように、もっと大きくしないと」

コウキくんは、駅前の建物を少しだけ後ろにずらして場所を空け、ロータリーを二倍の大きさに作り直しました。

大きなバスも、ゆっくりと、安全に回ることができます。

待っていたお客さんたちは、バスから降りて、駅の改札へと向かっていきました。

​最後に、公園です。

コウキくんは、泣いているリスの赤ちゃんのもとへ行きました。

「ごめんね、高くしすぎちゃったね。今、ちょうどよくしてあげるからね」

​ブランコのブロックを一度分解し、座る部分が地面に近くなるように、低い位置で組み立て直しました。

リスの赤ちゃんが、自分でひょいと飛び乗れるくらいの高さです。

「ついでに、滑り台も…」

急すぎた滑り台の角度も、もっと緩やかにして、小さい子でも怖くないようにしてあげました。

​リスの赤ちゃんは、新しいブランコに乗って、にこにこ顔でゆらゆらと揺れています。

その周りでは、他の小さな人形たちも、安心して滑り台で遊んでいました。

​コウキくんは、額の汗をぐいと拭いました。

街のあちこちを作り直すのは、少し大変でした。でも、キラキラタウンは、前よりもずっと、ずっと暮らしやすそうに見えます。

キラキラタウンの住人たちの、楽しそうな笑い声が聞こえてくるようでした。

​すっかり日が暮れて、コウキくんの部屋の窓からは、一番星がまたたいているのが見えました。パパが部屋を覗き込みます。

「コウキ、すごい街ができたじゃないか。おや?少し形が変わったかな?」

​「うん!」

コウキくんは、誇らしげに胸を張って言いました。

「キラキラタウンを、バージョンアップしたんだ!みんなが暮らしやすいようにね!」

​コウキくんは、パパに今日一日のできごとを話して聞かせました。

救急車が通れなかったこと、考えて、道や駐車場を作り直したこと。

バスや公園の問題も、どうやって解決したのかを、一生懸命に説明しました。

​パパは、優しくコウキくんの頭を撫でました。

「そうか、すごいなあ、コウキ。ただ作るだけじゃなくて、そこに住むみんなのことを考えてあげたんだな。それこそが、一番大切なことだよ。コウキは、本当に世界一の建築家だ」

​パパに褒められて、コウキくんはちょっぴり照れ臭くなりました。

でも、胸の中は、あたたかくて、大きな満足感でいっぱいでした。

​新しくなったキラキラタウンは、本当にキラキラと輝いて見えます。

それは、ただブロックが光っているからではありません。

そこに住むみんなへの、コウキくんの優しい気持ちが、街全体を輝かせているのでした。

​救急車は、いつでも出動できるように、広い道路の脇で静かに出番を待っています。

バスは、駅のロータリーでぐっすりお休み中。

公園のブランコは、明日の子供たちを待って、星の光に照らされています。

​「みんな、おやすみ」

​コウキくんは、キラキラタウンの住人たちに、そっとおやすみを言いました。

クマさんの一家も、ウサギさんたちも、ライオンの駅長さんも、みんな幸せな夢を見ていることでしょう。

​コウキくんは、パパと一緒におもちゃを片付け(キラキラタウンは壊さずに、そのままです)、ベッドに入りました。

体は少し疲れていたけれど、心はぽかぽかと温かく、達成感で満たされていました。

​目を閉じると、キラキラタウンの楽しい景色が浮かんできます。

​「明日は、キラキラタウンに学校を作ってあげようかな。

それとも、みんなで楽しめる大きなプールがいいかな…」

​新しいアイデアが、次から次へと湧いてきます。

コウキくんの街づくりは、まだまだ始まったばかりです。

​やがて、すー、すー、と穏やかな寝息が聞こえてきました。

世界一の小さな建築家は、次なる素晴らしい街の夢を見ながら、深い、深い眠りについていきました。

​おやすみ、コウキくん。

おやすみ、キラキラタウンのみんな。

また明日、素敵な一日が待っているよ。

投稿者 まねき猫

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